第3章 いつもの昼、いつもの夜
「それじゃあ出ますかっ!ーあっ、追加料いくら払えばいい?」
彼がドア付近でこちらを振り返ってきた。
「んー、いりませんよ。その、多分、私からねだってたはずなので…///」
彼の顔を見ないように言うと、すぐに笑い声が聞こえた。
実際、あのまで外に出されるのは嫌だった。私の中で果てて欲しかったから。
「そ?ありがとう。じゃあこれは交通費ってことで受け取ってよ」
彼は私の手にお金を握らせてくれた。
最初は断っていたが「年上のプライドを無下にするな」と言われたのでありがたくもらっておいた。
すっかり寒くなったPM9:53
ホテルを出た私達は別れの挨拶を交わす。
「今日はありがとう。またね」
「ありがとうございました」
最後まで屈託のない眩しい笑顔を私に向けて、手をひらひらと振ってから夜の街に溶けていった。
今日ほど『ルール』がもどかしいと思った日はない。
●お客様の名を聞いたり、詳細を聞き出したりはしない。
(自己責任で名乗ったり、教えたりするのは自由)
●私の詳細を聞き出したりはしない。
●最低18000円払うこと。(先払い)
などなど、援交をしていく上で不利のないようにルールを決めている。
「名前だけでも…聞きたかったな」
でもそれはルールに反する。
「勉強も学祭の準備もあるし…帰るかぁ」
私はまだ濡れている髪の毛をアップにして、ネオンの街を通り抜けた。
帰ってからお風呂に入ったり、軽めの夜食を食べている時も彼の顔が頭に浮かんだ。
「引きずっちゃダメ…こんなんじゃ両立できないしっ!」
私は自分に言い聞かせ、また勉強机へと向かった。