第3章 危険海域
『ありがとうございます』
そう言って降り立った女将校。
コイツはちゃんと場の空気を読めるのか?
ちょうど甲板に赤髪の姿が現れた。
メインマストに背を預け、座っているオヤジの元へ真っ直ぐに向かう。
俺達は、固唾を飲んで一足一瞬に目を走らせる。
集中しなきゃいけない場面。
だが、後ろでピョンピョン跳ねるこの女将校のせいで気が逸れる。
「お前は何をしたいんだよい!」
『見えないの!あっ、ちょっと肩乗せて!!』
「乗せるなッ!ここに座れッッ!!」
隣にいたジャズに這い上がろうとするのを止める。
手摺に座っていた俺の隣に引っ張り無理矢理座らせた。
これで少しは見やすくなるだろう。
療治の水とか言ってオヤジに酒を差し出す赤髪。
そんなオヤジは、笑っていた。
チッ、これ以上黙ってらんねぇ。
「オイ、赤髪てめェ何してくれてんだい!!」
俺の言葉に赤髪は呑気に俺を自分の船へ引き抜こうと話を振ってくる。
冗談じゃねい。
「うるせェよい!!」
『ねぇ!
あの野郎って誰?療治って病気なの!?
でも、手に持ってるのが水なら何で酒って書いてあるの!!?』
俺の服の裾を引っ張る女将校。
「お前もうるせェよい!!」
「グラララ、マルコそう怒るな」
久しぶりに本気で愉快に笑うオヤジ。
この女将校を優しい眼差しで見ている、何故だ?!
「オヤジ・・」
ジャズが話し掛けるとオヤジは赤紙と2人きりで話をしたいとの事。
戦争じゃないのなら、取りあえずは安心だ。
『はい!はいはい!!
私も一緒に聞きたい!!』
「頼むから黙ってろいッッ!!」
コイツを檻にでも入れとけと船員に指示を出すとそれをオヤジが止めた。
「グラララ・・・構わねェよ、いいだろう?」
「あぁ、将校1人どうとした事じゃねぇ」
『話の邪魔する気は無いから安心して!
私の任務は監視だけだからッ!』
楽し気に話すコイツは、本当にこの場の空気を読んでいるのか?
赤髪の覇気に意識を保つだけの実力はあるようだが、得体が知れねェ。