第15章 第5話 古城
ーグライガナ島ー
『帰ろう、うん、帰る』
「何言ってんの、ここまで来てんだぞ?」
『だって!絶対ーーーィッッ、ここ出るよ!オバケがッ!!』
薄暗い鬱蒼とした森。
その先に見えたのは、古城、いや廃墟。
『ミホークって趣味悪い』
誰が好き好んでこんな場所に住もうと思うの。
ビブルカードを頼りにここまで来たが、後悔の連続だ。
「まぁ、城へ行ってみるか」
私の気持ちなんか御構い無しにどんどん先へ進んで行くクザン。
こんな所に置いていかれたら堪らないと、私は必死に後を追いかけた。
ードドドッッッ!!!!ー
「何だあれ?」
『お、オバケっっ!!!?』
突然、前方に現れた音の正体に私は一目散に逃げ出した。
「おい!?ちゃん!!?」
クザンの言葉を聞くのも嫌。
あんな得体の知れないモノと戦えるはずもない。
況してや、視界に入れる事すらしたくない。
『ミホークっっっ!!!
いるなら助けてぇぇぇぇっっっ!!!』
悪人や虫や猛獣なんて怖くない。
実在しない存在だけは受け入れきれなかった。
走りに走った私は、どう走ったかわからなくなり湖の畔に着いた。
『・・ここ、何処?
クザン何処に行ったのよ・・・』
船に帰りたいが帰り道がわからない。
また、あの森を歩くなんてとても出来ない。
途方に暮れて、湖の畔に座り込んだ顔を伏せる。
どうしょう・・
怖くて動けない・・
「てめぇ、何者だ?」
シュッと風を切った音が耳に届く。
気付いた時には、首元に鋭利な刃先が当たっていた。
「さっさと答えろ、何者だ?」
『。
ミホークを探して此処に来たの』
「・・鷹の目を?」
スッと、首元が自由になった。
「鷹の目に何の用だ?」
足、ちゃんとある。
ちゃんとした人間だ。
下を向いていた私の前に立つ、2本の足に安堵した。
オバケじゃない。
ちゃんとした人間だとわかった途端、涙腺が緩んだ。
『良かった・・死ぬかと思った・・・』
「!!お前ッッ、何で泣いてんだよッッ?!」
大粒の涙を止め処もなく流す私に、ちゃんとした人間の男が焦った声を出す。
何度も声を掛けてくるが、緩んだ涙腺を止められない。
頭を掻いて、ため息を吐いた男は私を肩に担ぎ歩き出した。