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【ONE PIECE】 海の娘 ウミノコ

第2章 海軍本部





「兄だと?
あんな音も無くただただ、流す涙が兄へ対する涙なのか?」

『何を疑っているかはわからないけど、あの日泣いたのは自分への無力さと兄への思いだけよ』

目の前で起こっている出来事のように見えるアレを知ってもらおうとは思わない。

手を伸ばせば届く距離の様に感じる、虚しさ。
知り得た事を伝えられない、もどかしさ。
自分の非力と愛を教えてくれたあの人を失った、どうしようもない憤り。




「・・その血の力か?」

何を言わなくても気付くベガパンクの頭の良さには、敵わない。

『・・・私の血、もっと興味が出た?』

「いや、元々興味があったから前とは変わらない。
ただ・・、泣けないをどうしたら泣くのか、もう手段が思い付かない。
八方塞がりだ」

『!!』

「が苦しんでいるのがわかるんだ。
以前からずっと見てきたから・・
どうしたら泣いてくれる?俺に心を預けてくれる?
最近は研究よりそればかりを考えている」




あぁ・・・
この人は、何てわかりにくい気持ちを持ってるのだろう。
頭脳ばかりを持て囃され、曲がりくねったこの気持ちを伝える術を知らないのだろう。







『・・内緒にしてくれる?
私を見捨てないでくれる?』

そっとベガパンクに近寄る。
その距離は少しの隙間しか無い。

『・・・今夜だけ。
今夜だけ貴方を利用してもいい?』

「あぁ、の望みを叶える。
代わりに俺に全てを託して欲しい」




そっと壊れ物を扱うように触れるベガパンクの身体は暖かった。

失ったあの人を思わせる、暖かさ。

私とベガパンクの気持ちは形が違えど、私が求めてきたモノと同じ。

今は、只々その温もりに身を委ねた。





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