第1章 あの噂
「あれ、もう帰んの」
「今日彼女とデート」
「……っああー! 俺も彼女ほしー! セックスしたいー!」
「お前の分までまんこにちんこ挿れてくるわ」
「うああー」
「じゃなー」
「おう」
彼女持ちの友人と別れる。俺も、トイレに行くと他の友人に告げ、席を立った。
……それにしても、あの噂って、本当なんだろうか。
プールの男子更衣室に、ビッチが出るという噂。
あの更衣室の棚に、どこに繋がるかもわからない携帯電話番号が書かれている。文字がかすれて、かろうじて携帯電話の番号とわかるだけで、正確な数字を読み取ることはできないが……。その電話番号にかけると、ビッチに繋がるらしい。
単なる七不思議の一つが、“年頃のオトコノコ♂”によって、ホラーでなくエロへ傾いた。ただ、それだけ。その話を聞いた日からずっとそう思って、特に気にも留めずにいたけれど。
でも……、数日前、“出た”んじゃなかろうか。
あの噂の原因は、オナニーじゃない。本当にビッチが出て、男が襲われたんじゃないか? だから……。
先日、俺は、電気あんまの刑を受けた。だが、信じてほしい。俺は、無実だ。あの噂とも関係がない。
そりゃあ、確かに、俺は、ちょっと露出癖がある。部屋のベランダとか、登山した時の山の中とかでしこったことは、ある。でも、こんな、毎日通う、顔見知りもたくさんいる場所で、ちんこは出さない。出すとしたら、こういうトイレと、プールの時の着替えくらいだ。
いくら変態でも、おちんちん丸出しでうぇーいとかしたら、公然猥褻で捕まるからね。もう、大人と言える歳と体だ。それくらいの常識は、わきまえている。変態でもね。いや、変態だからこそね。