第10章 すれ違い
side.
文化祭が1週間後に迫り、学校全体が浮き足立ってきた
演劇部も舞台の披露に向け、練習も大詰め
一緒に帰る機会は減り、自分もクラス展の内装準備を手伝い、一旦帰宅してバイトに行く繰り返し
「はぁ」
寂しい、んだろうな。俺、知らない間に・・・
とりあえず時間だしバイト行くか
ほんの少し冷える空気を切って、足早にバイト先へ向かう
商店街を抜ける
ふと前を見ると人の波の中にカラ松がいた
声を掛けようかと思った瞬間、隣に女がいるのが目に入った
見知らぬ制服の女生徒
腕を引かれ、嬉しそうに笑っているカラ松
部活で一緒に帰れないって言ったのに、わざわざ待ち合わせか?
・・・なんだ、やっぱり人なんてこんなものか
あんなこと言ってたのに口だけじゃないか
俺じゃなくたっていいんだな
元に戻るんだ
全てが煩わしくて塞ぎ込む毎日に
・・・俺にはそれがお似合いなんだ
別の道を行くために踵を返す
ポケットからスマホを取り出した
『あんたは俺じゃなくてもいいんだな』
一瞬だけ送信を押す指が躊躇した
けれど、さっきの嬉しそうなカラ松を思い出す
そうだ
女と付き合って真っ当な人生を歩む方がいいんだ
送信を押す
――――「楽しかった」日々は終わり、か――――