第27章 海の底
side.カラ松
の誘いで水族館に行くことになった
結衣さんがチケットをくれたらしい
「前に行きたいって言ってたから」
カ「覚えててくれたのか」
「まぁね」
道中そんなことを話す
目的地に着き、中に入れば少しヒンヤリとする
「取りあえず順路通り行くか」
そう言いながら、当たり前のように手が繋がれる
色とりどりの魚が泳ぐ水槽
時折会話をしながら眺めては進む
やがて水中トンネルへと差し掛かった
中央で立ち、上を見上げる
「すげぇ・・・海の底にいるみたい。なんか、落ち着くな」
なんとなく声を掛け辛くなって同じように上を見上げる
カ「・・・海、好きなのか?」
「あぁ、見るだけなら・・・・ここ出たら海行こっか」
カ「いいぞ」
そう言いながらまた館内を進む
外に出る頃には昼を過ぎていた
「今からなら夕方には着くか」
電車に乗り移動する
目的の海に着く頃には、日が少し傾き始めていた
人がいない砂浜を歩き、波打ち際に近付く
「いい音。やっぱ落ち着くな」
ジッと海を見つめたままの
少し寂しくて手を繋いだ
「俺さ、ずっと光も届かないような暗い海の底にいる感覚だった」
相変わらず視線は海だ
「今思えば自分で塞ぎ込んでただけだけど」
ギュッと繋いだ手に力がこめられる
「でも、今は違う」
ゆっくりとこちらを向き、微笑む
「カラ松がいるから」