第3章 吉良吉影の殺人理由 *吉影*
【杉本】
その名前が憎たらしい。
お前のせいで…お前が生きていたせいで…葉音が僕の隣から消えてしまったじゃあないか。
だから僕は恨みを返すよ。
…そうだ、葉音はとても綺麗な手だった、まぁ…他の全ても綺麗だったけれど。
じゃあ、もう葉音が居ないのならば【代わり】を見付ければ良いのか?
共通点。
この娘と葉音の共通点。
葉音に何て決して及ばないけれど、綺麗な手だ、綺麗な手。
僕の葉音を奪った。
その重い罪をお前が果たせよ。
僕の優雅な時間を返せよ。
僕の葉音を返せ。
……ーあの時に戻れたら、僕は葉音に何をしてあげられたのだろうか。
……ーあの時に戻れたら、僕は葉音の【ヒーロー】になれたのだろうか。
「ねぇ、葉音」
血塗れに染まった僕は窓際から黒く濁った空を見上げて囁く。
君にずっと言えなかった言葉。
君にずっと言いたかった言葉。
僕にそんな事を言う資格は無いかも知れないが、今日だけ許してくれ。
「愛してるよ…」
*EИD*