第9章 君の名を呼ぶ紅と虹 【R18】
(いいお天気だなぁ~)
ここ数日、雨が続いていたが、今日は朝から快晴。冬空に差し込む日差しが心地よい
(お昼食べたら、城下に行こうかな)
ふっと、一人の顔が頭をよぎる
(佐助君、元気かな…)
現代仲間である佐助、敵陣春日山藩主上杉謙信に仕える忍びだが、天井裏からいつもやってきてはつかの間、茶を飲む真柄でもあり、めいがひそかに恋焦がれる男
支度を整え、城下へ行くことにした
(賑わってるなぁーー)
色とりどりの反物、野菜、甘味処と皆、思い思いに行商に勤しみ、城下は平穏な空気で賑わう。新しい反物を買い、佐助に着物を一つ新調しようと思った
(いつも、気にかけてくれるし…変じゃないよね…プレゼントしても…)
馴染みの反物屋へ入り、並んだ品物を吟味していた
「おや、めい様、今日はお一人ですか?」
店主がにこにこと声をかけてくれる
「はい、秀吉さんはお城で政務に務めてますよ」
「いい所に来ましたねー!新しい反物が入ってますよ!」
赤や青、丁寧に染め上げられた反物が並び心が浮き立ってくる。あれこれと品定めしていると、一層心がを掴む反物が目に入った
「どれも、素敵ですねー!あ、これ、綺麗ーー」
深い緑色の反物。控えめに施された装飾。男性物の反物が目に入る
「中々珍しい色でね、染める時にちょっと工夫をしてるんですよ」
店主は楽しそうに染色の技法を教えてくれた
「なるほど。丁寧な作りで色も深くて素敵です!これ、頂けませんか」
「ありがとうございます。お安くしておきますよ」
「で、でも!いつもお安くして頂いてるのに!!」
「ご贔屓にしていただいていますし、信長様のおかけで私達はこうして行商を出来るんです。ささやかなお礼として受け取って下さい」
店主はぺこりと頭を下げにこやかな笑顔で反物を包んでくれた
「いつも、本当にありがとうございます!いい着物作りますね!」
(嬉しいなぁー。喜んでくれたらいいなぁ…)
お代を払い、笑顔で反物屋を後にした
少し歩くと簪や櫛を売る見覚えのある顔がちらりと見えた
(あれ?もしかして…)
近づいて見ると向こうもめいに気づき声をかける
「よー。イノシシ女」
「だから!イノシシ女じゃないって言ってるでしょ!失礼だよ、幸村は!」
(失礼なんだから!)