第5章 天仰ぎし恋と愛 【R18】
んんーっっ
何やら音がすると思い眠い目を擦って起きると信長が身支度していた
「んんー、信長様?」
「貴様はまだ寝ておれ」
外はまだ少し薄暗い様子
「もう、出掛けられるのですか…?」
布団から出て立ち上がるが、信長がこちらに振り向く気配はない
「ああ、隣国の大見が領地の小競り合いをしておる。暫くは戻れん」
「そう…ですか…無理はしないでくださいね…」
「ああ、行ってくる」
「いってらっしゃいませ…」
信長は振り返ることはなかった。襖の閉まる音が静まり返った部屋にに響き渡る
(どうして…振り返ってくれないの…どうして、行ってきますって口付けもしてくれないの…)
このところ、信長の帰りは遅い。めいが寝静まった頃、戻ってくるが、起きる頃には姿はない。布団には僅かな温もりだけが残っているだけの生活
(嫌われたのかな…)
日課だったはずの朝の口付け。信長の無事を願い重ねる、めいの意思を汲み取りやんわりと下唇を喰んで応えてくれたあの温もり
「信長様…」
やっと逢えた愛おしい人なのに顔もまともに見れず、会話も短編的で
心にぽっかり穴があき、温もりを喪った布団の中で一筋の涙を零した
外では雀がチュンチュンと鳴いている
(朝だ…起きなきゃ…)
布団をたたみ、着替え障子を開けると澄み切った青空
相反して曇りどんよりとした自分の心
(ここに居ても、信長様は暫く帰って来ない…)
素っ気ない態度の真相を聞きたい、けれど信長は忙しい身、余計な事をしてはいけない…この感情を心の中に閉じ込めた
布団をしまい、風呂敷に持ってきていた着物類をまとめ部屋を後にした
着いた先は自室。今は針仕事をする部屋として使っている。着物や帯も殆どはここに置いている。
(久しぶりだな、ここで寝るの)
女中から朝餉の準備が出来たと声がかかり、広間へと向かった
(食べないと秀吉さん、心配するよね…でもあんまり欲しくない…)
「おはようございます」
用意された膳の前に座ると横に座った政宗に顔を覗き込まれた
「キャッっ//ま、政宗ーー何!?!?」
「お前、目が真っ赤だそ?」
ドキっ//
「き、昨日、新しい着物の事思案してたら寝不足になっちゃったの!!」
「へぇー」
「ち、近いっっ!!」
(泣いてたのバレるよ…)