第4章 白夜に映りし碧と翠 【R18】
めい自室で文を書いている
慣れない筆と墨。書き損じても消しゴムなんてありもしない
滲まぬように…慎重に筆を進める
(この時代の文字って難しい…)
日が傾いた頃、佐助がやってくる。文を託し持ち帰ってもらうのだ
愛おしい、謙信へと綴る恋文を
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謙信から文が届く事は無い。一方的に送る形の文
織田家ゆかりの姫として表向きに過ごすめい、互いに敵同士だと知らず出会い、謙信への恋心を自覚するも戦場で再会した
織田陣の救護として戦場へ赴き、顕如の手下に連れ去られてしまった時のこと。恐怖と不安で押しつぶされそうになった時に助けてくれたのが謙信だった
(謙信…様…)
震えるめいを抱き寄せ、切なげな眼差しを向ける
ーー何故俺の心を締め付けるのだーー
涙を浮かべるめいの目尻に口付けを落とし流れるように唇を塞いだ
包み込むような甘く優しい口付け。互いの唇が離れると同時に馬の音が聞こえる
秀吉がめいを探していたのだ
「あ、あの、謙信様…助けて下さってありがとうございます。また…お会い出来ますか…」
精一杯の気持ちを振り絞り謙信に問いかけると
「ああ」
たった一言残し、謙信は去っていった
駆けつけた秀吉は謙信の気配に気づいていた
「何故、上杉謙信がいたんだ?まさか…何かされたのか?」
殺気を滲ませた秀吉がめいを問い詰める
頭をブンブン振り、謙信に助けられた事を必死で話す
「謙信様がいなかったら私はどうなっていたか分からない。私にとって命の恩人なの…例え敵将でも甘い考えでも…」
涙を浮かべるめいを見て
(しまった…こんな問い詰め方するつもりじゃなかったのにな)
「ごめんな、俺が悪かった。お前を困らせてしまったな」
ポンポンと頭を撫で気持ちを落ち着かせ天幕まで戻っていった
天幕へ戻ると戦の終結の報告が入る
顕如一派が噛んでいたことが終結に繋がった事だけはめいにも理解出来た
斥候からの知らせは手短で信長達も終結の意図は詳しくは聞かされていない
(謙信様も佐助君たちも無事ってことだよね?誰も負傷してないってことだよね…)
安堵の表情をうかべ負傷した兵士の手当をし安土に戻ったのは十日前の事