第1章 不器用な花と蜜 【R18】
仲良く城下を巡るはずだった…
はずなのに…
事の発端は一刻前の事
めいと幸村は久しぶりに二人揃って城下へ行けることになった
針子の仕事が立て込み、幸村は信玄と共に視察に出向くことが多かった為、褥を共にしていてもお互いの時間はなく、すれ違いの生活が続いていた
佐助より、信玄様の伝言で明日は幸村と二人で城下へ行くといい、と告げられ嬉しくて仕方なかった
(久しぶりに幸村とデート)
二人仲良く城下にある茶屋へ向かった
店で一番人気だというきな粉餅を頬張りめいは嬉しそうな顔をしていた。
「とっても美味しい!お餅も柔らかいし、きな粉の甘みが優しい!」
「おー。そーだな」
素っ気ない言い方だか、めいを見る目はとでも優しく、口元に笑みを浮かべている
御機嫌でお茶を飲むめいと幸村の前に数人の女性が足を止める
「お兄さん、とても素敵な殿方ね。私たちに城下案内してくださらない?」
(え?どういうこと?)
めいは状況が掴みきれていない
「あ?なんで俺が案内しないといけねぇーんだよ?他所をあたれ」
(ったく、めんどくせぇ奴らだな)
素っ気ない言い方であしらうも女達は食い下がること無く詰め寄る
「いいじゃないー こんな素敵な殿方見たことないの!ね、お願いよー!」
あれよあれよと幸村に詰め寄る女性達
その一人が私に目をやり、スーっと詰め寄ってきた
「あんた、この人の連れ合いかい? 釣り合ってないわね」
(え?)
その一言はおそらく幸村には聞こえていなかっただろう
冷たく凍りつくような声色で告げられた一言
その女は細身で背も高く、現代で言えばモデルとしてスカウトされてもおかしくない容姿。長く黒い髪を一つに束ね妖美な色気を放っている
小柄で童顔のめい。自分とは正反対の容姿端麗な女を前に言い返す言葉も思いつかない
(こんな綺麗な人に太刀打ち出来ない…)
自分でも本当に幸村にふさわしい女なのか、釣り合っていないのではないか、そう自問自答することは暫しあった
素っ気ない言い方で幸村は可愛いだ、好きだとはわざに口には出さない
それ故に酷く落ち込むめい
一人疎外された形になっためいに声をかけようとするも、幸村の目の前にはまだ女達がいる