第17章 野に咲く花、枯れぬ花~信玄~【R18】
二人して城下へ出た。正直、ちょっと不安…
どれだけ愛し合っても…この色気に皆翻弄されるもの…
(やっぱ皆見てるよね…)
指を絡め歩いてるけど、信玄様人気は衰えなくて
あちこちからお声はかかる
「あら、いい男ー!お兄さんー!」
(やっぱり…)旅芸人の女性達が、信玄様を見て、声を上げる
「今朝方ここに着いたの。城下を案内して下さらない?」
「お礼は弾むわ。いい男にはいい夢を売るのも私達なの」
化粧(けわい)の香り、容易く信玄様に触れる手
ここで黙ってたって、仕方ないそう思い口を開いた
「あの!」
「生憎だが俺には愛おしい女がここに居てな」
「…!!」
ぐっと抱き寄せられ唇を塞がれた
「…見せつけてくれるわね。仕方ないわ」
肩を竦め女達は去っていった
顔は真っ赤になり、硬直してしまう
(こ、こんなところで…!)
「し、信玄様!」
「俺の愛おしい女だと皆に知らせる必要があっただろ?」
(だからって…いきなりこんなところで…)
「で、でも…」
「足りないならばもっと与えよう」
艶めいた表情を浮かべ躊躇いなく唇を寄せられ
「あ、後で!!」
思わず掌で口元を覆ってしまった
が、信玄様は掌に唇を寄せ舌でぺろりと舐め上げる
「っっ!!」
「口付けは掌よりくちびるがいいな、姫」
そっと手首を掴まれ、そのまま手を繋ぎ歩き始めた
(叶わないなぁ…)
二人のやり取りをたまたま見かけた幸村は城に戻り佐助に一部始終を話した
夕餉の折、真顔で佐助に事の流れを聞かれ針のむしろ状態になったのはここだけの話
終