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愛を紡ぐ~二人の欠片(カタチ)~

第17章 野に咲く花、枯れぬ花~信玄~【R18】




「信玄様、これどうぞ!」

「信玄様、お茶していきませんか?」

「信玄様、ちょっと寄ってて下さいよ」


町を歩けばキャーキャー騒がれる。絶大な人気を誇る信玄様


(私、もしかして…おまけ?)


私と居ても、女の子達はお構いなく黄色い声を上げる


グイっ……

「信玄様ー!今日こそ来て下さいよ」

(え……………)

無遠慮に町娘は信玄様の腕を掴み攫うように連れて行ってしまった


「めい…」


「…」


信玄様の声は虚しく、女の子達は次第に群になり取り囲む


ただただ立ち尽くすしか出来なかった…
その場から動けない。ぐるぐるする感情…

(私って…)


「おいっ!危ねーぞ!」

聞き覚えのある声がする…

「おい!聞こえねーのか!危ねーだろ!」

「わっ…!」


誰かに手を引かれた。気がつくと行き交う人とぶつかりそうだった


「ゆき…むら?」

幸村のおかげでぶつからず済んだ


「ありがとう。ごめんね…ぼーっとしてて」

「お前、何でぼけっとしてんだ?らしくねえ」


なんでって…それは…言えるわけもなく

「何でもないよ」

(言えるわけない)

えへへと笑ってお礼を言うけど、痛いところを突かれた



「信玄様と出かけたんじゃねーのか?」


ギクッ……

「うん…用事が出来たみたいで、先に戻ることにしたの」

精一杯の言い訳をして無理に笑った
変に気を使わせたくなかった…信玄様を誰よりも慕う幸村に


「じゃあ、なんでお前、悲しそうな顔してんだ?」

「気のせいだよ!帰ってきたらまた逢えるもん」

(心配かけるわけにはいかない)

早くその場を立ち去りたくてお礼を伝えて去ろうとした

「さっきは本当にありがとう、また後でね」

踵を返すと同時に手首を掴まれた

「お前、やっぱ変だぞ」

「…気のせいだよ」

顔を幸村の方に向けられない。目頭が熱い…
泣いちゃだめって分かってる。信玄様が悪いわけじゃない

「とりあえず来い」

手首を掴まれたまま幸村は城へと戻った
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