第15章 新たなる記憶を貴方と~謙信~
「謙信様…これ…」
針供養の為、古くなったまち針を何本かお暇にした
きらきらと輝くまち針を見ていると
「お前は俺の目が好きだと言っていただろう…白いまち針はお前だ」
「わ、私?ですか…?」
(どういう事?)
きょとんとしているとまち針を取り上げそっと横に置かれる
流れるように抱き締められ
「お前は血を流し赤く染まることは許さん。白く無垢なままでいろ」
刹那にも似た苦しげな声が耳元にこだまする
戦狂いの軍神と異名を持つ男からの愛情がこの針に込められていた
「謙信様…ありがとうございます。大切に使いますね」
嬉しくて顔をあげれば目元に口づけが落ち鼻先に、流れるように唇へと落ちる
「んっっ…」
(幸せ…)
唇が離れると胸にぴったりと顔を埋められ
「お前は寝言で何度も俺を呼んでいた。例え数日離れることがあったとしてもその針に俺の思いを移しておけ」
「一生何処へも行かせん、お前は俺とともにある」
「はい。ずっと謙信様のお側にいさせてください」
狂気めいた愛情さえ愛おしく、この人の傍を離れる事など絶対にない
そう深く思いどちらともなく唇を寄せ合い甘く深い口づけを繰り返した
終