第14章 月が知る~幸村の思い~ 【R18】
自分の腕のなかで深い眠りに落ちためい
狂おしい程の色気を放った顔は一変し、幼子のような寝顔
(こいつ、子犬みてぇだな)
そっと頭を撫でれば顔を擦り付け眠るあどけない顔
すやすやと眠る姿を焼き付け幸村も眠りについた
次の日の朝、鏡台の前で髪型に四苦八苦しているめい
「んん…違う…纏まらない…」
(こいつ、ひとり百面相か)
「ほら、櫛、貸してみろ」
髪を梳かし、器用に髪を編み込んでゆく
毛先をくるりとまとめ懐から髪飾りを出しそっと髪を留めた
「幸村…これ…」
「似合ってる。お前、この前見てただろ?」
白い小さな花の付いた髪飾り。まわりは銀細工が施され凝った模様をあしらっている
「綺麗…!ありがとう!大切にするね」
ふにゃふにゃ笑うその笑顔が愛おしくてそっと抱きしめる
「お前みたいだな。健気で無垢な花って」
「…そ、そんな!健気で無垢なんて…」
顔を真っ赤にする姿が一段と愛おしく、顔を見せる項に口づけを落とし
「本当の事だ、昨日は色っぽかったけどな」
(堪んなかったな、昨日のこいつ)
そっと顎を掬い上げ、唇を寄せたその時
「幸ー、入るぞ」
「…!!」
「…げっ…」
ガバッと二人は体を離しめいは顔を俯かせた
(何でこんな時に来るんだよ)
「おや?逢瀬の邪魔をしたか?」
余裕の笑みを浮かべる信玄
「ったく、そんな事言うためにここに来たわけじゃないですよね?」
(本当は邪魔されたけどな)
「あぁ、とびっきりの羊羹が手に入ってな。めい、一緒に食べよう」
「あ、ありがとうございます、お茶入れますね!」
めいはさっと顔を背けお茶を入れ始める
「いい事あったみたいだな、幸」
耳元でぼそっと告げる信玄に何もかも見透かされたようで腹が立つ
「はいはい、信玄様、くだらない事行ってるとそれ没収しますからね」
「やれやれ、お硬いな。ほら、めい、口を開けて」
「ええ!?」
(隙あらばこの人は)
ピシッと手を跳ね除け間に割って入る
「戯れはそこまでです」
信玄の戯れを阻止し三人は羊羹に舌鼓を打った
(まぁこいつが喜んでるからいいか)
楽しそうなめいの横顔に目を向け一時の談笑を楽しんだ
終