第2章 No.2
「副長、今日も定食屋ですか?」
屯所を出るところを山崎に声を掛けられた。
オレが手作りマヨネーズに魅せられて定食屋に通っていることは、もはや屯所内で知らない者はいない。
しかし、普段のオレのマヨラーぶりを知ってるヤツ達は、オレが純粋にマヨネーズの為に定食屋に通っていると信じているようだ。
「あぁ。あのマヨネーズはやめられねぇ。神のマヨネーズだ!山崎、お前も一緒に食べに行くか?」
「あ、いや、あの、オレはさっき食堂で昼飯食ったから…」
山崎は慌てたように手をブンブンと振りながら断った。
ふん、お前にあのマヨネーズの良さが分かるとは思えねぇ。こう誘えば、みんな一様に首を横に振ることは分かっている。
それに、ゆきの存在を知られるのはなんとなくイヤだ。誰にでも優しく接するゆきに、野郎共がいつ手を出そうとするかわからねぇからな。
ゆきはオレの大事なマヨネーズの神だ。他のヤローを見て欲しくねぇ。
「そうか。んじゃ、行ってくる」
「ハイ!いってらっしゃい!」
ビシッと敬礼する山崎を後ろに歩き出した。
今日もいい天気だ。
青空の下、初夏の爽やかな風が吹き抜ける。
ゆきのマヨネーズを初めて食ったのは春だったから、あれから3ヶ月近く経つ。
先日、ゆきも武州出身だということがわかった。オレの出身の村とは少し離れた集落出身だそうだ。同じ郷土出身だからか、余計に親近感が湧く。今度一緒に武州に行ってもいいな。
そんなことを考えながら歩いていると、ふいに真後ろから殺気を感じた。
慌てて身を振りかぶり刀に手を掛けるが、一瞬遅く、脇腹を深く斬られる。鋭い痛みが走った。