第14章 ~漆半々~GO3
脇差を収め桃の手の平の傷を治すと自分も立ち去ろうとする
「待ってくれ!!」
「…なんでしょう。私を捕らえますか?」
「いや…お前が来てくれたおかげで雛森は死なずにすんだ…ありがとう」
「いえ…私が死なせたくなかっただけです」
「……お前らの目的はなんだ?朽木ルキアの奪還ではないのか?」
私は少しの沈黙ののち言葉を紡いだ
「…真実を知る為、そして時の流れを変える術を見つける為」
「?……どういう事だ?お前は何か知って―――」
「隊長!!!」
「松本…」
その声に冬獅郎は一瞬目を逸らす。そして再び視線を戻すとそこにはもう旅禍の姿は無かった
「命令通り隊舎へ帰ろうとしたのですが…氷輪丸の霊圧を感じて戻ってきてしまいました。先程の女…旅禍ですね。……追いますか?」
「いや……いい。雛森を運ぶのが先だ」
冬獅郎は桃を運びながら綺麗に傷を治してある桃の手を見つめ、先程の言葉の意味を考えていた
私は冬獅郎の元から去った後、ギンの後を追っていた
そしてギンを見つけると前に立ちはだかる
「お前は…追ってきたのか!!旅禍が何用だ―――」
「ええよイヅル。ボクが相手するから先に行き」
自分の言葉を遮りこの場を離れる様に指示するギンにイヅルは困惑する
「で…ですが…」
「ええから…どっかで十番隊長さんにやられた傷でも癒しとき…」
「わ…解りました」
イヅルは何とも言えぬ威圧感から逃げる様にその場から立ち去った
そしてギンはイヅルの姿が見えなくなると私に向き直る
「…で?旅禍の姫さんがボクなんかに用でもあるんかな?」
「…そんなお芝居はいいですよ。気付いているのでしょう?白道門で会った時から…」
その言葉にギンはさらに笑みを浮かべる
「なんや気付いとったん?そちらさんが隠しはってるからボクも付き合うてあげとったのに……お帰り…サラちゃん♪」
私はその言葉に静かに襟巻きを押し下げると、ギンの前に素顔を曝した