第2章 邂逅
「あれー?また会ったね?」
「えっと…」
「水澤日菜乃です!」
「あー。そうそう。水澤ちゃん。」
「随分頑張ってるんだね?」
「え?」
「最近、他の現場でもキミのことを耳にするよ。」
「この調子で頑張ってね~。」
「って、俺が言うのも変だけど…。」
「じゃあ。」
軽く手を上げて、背を向ける。
『水澤ちゃん。』
名前を呼ばれたのが嬉しくて。
苗字だけで十分。
それに『さん』じゃなくて、『ちゃん』だったのが嬉しい。
この後スタジオ入りした途端、スタッフさんに「ご機嫌だね?」と声を掛けられた。
だって。
上がりっぱなしの口角を隠せないんだもん。