第37章 乱脈
「よっと。」
手を取ると、グイッと引き上げられる。
「ありがとうございます…」
「またぶつかってしまって、すみません…。」
目を伏せながら頭を下げる。
「4回目って?」
「タツさん。おはようございます。」
「日菜乃ちゃんとよくぶつかるんですよ。」
「それだけです。」
「ふぅーん。」
耳に全神経が集中する。
岡本さんと会わなくなって数ヶ月。
色々あったし…
私の中で岡本さんの存在が薄れていったのは事実だった。
恋なんてしてないんじゃ無いかって思っていたとこだったのに…
一目会っただけで。
声を聞いて…
岡本さんの手に触れて…
胸の奥に灯がともる。
忘れかけていた感情。
心臓がうるさい。
どうしたらいいの…?