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遠い約束

第4章 みっつ振って


【男子テニス部】【レギュラー】―――そのふたつが揃ったとき、人はどんな反応を示すか。
妬みなり、羨望なりは主に男子から。
だが、高三にもなった今はそこに憐れみがまじる。
そして、その原因となる女子の態度は、一言で言えば“好意”。
下心があるか無いかは置いておく。
それは中学時代から変わらない反応だった。
だからこそ、目の前の少女がどこまでも異質に映るのだ。
「へぇ、大変な部長持ったね。がんばって」
良くも悪くも、よく目立つ存在である自分達に、ここまで無関心だったヤツは見たことがない。
ゼリー飲料をすする女子生徒を見下ろし、半ば呆れをこめて息を吐き出した。

「『私がやっていいー?』 とか言わんの?」
「んー。どうして…っていうか、貴方だれ?」
ふいっと持ち上げられた青の双眸に、茫然と自分より小さな少女を見やる。
まさか、ウチの生徒で知らないヤツがいるとは思わず、知らない男と平然と二時間のお喋りを興じる神経が信じられない。
「…あれ、会ったことある?」
「いや、今が正式なハジメマシテじゃ」
「あ、私鈴奈ね。北里鈴奈 」

宙に指を滑らせて軽く字を書いてみせたかと思うと、大きな眼がじっとこちらを見上げる。
本当に知らなかったのか、と一つ頷き、同じように指を宙へ向けた。
「仁王像が雅に治める、で仁王雅治なり」
におう、と小さく復唱され。
途端に興味が失せたのか、二つの青はあっさりと俺を通り越して、広い空へと向かう。

(―――あぁ)
困った、と自分の髪をかきまぜる。
「のう、お前さん―――マネージャーやらん?」
今心にあるこの感情は、どうやら興味だけで済みそうにない。
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