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遠い約束

第3章 ふたつ振って


「マネージャーが欲しいな」

部活終了後、我等が大魔王様―――もとい偉大なる部長様は呟いた。
独り言にしてはやけに大きなボリュームと誰に向けたかわからぬ(表向きは)麗しい微笑みに室内の温度がぐんと下がる。
結果的に、妙なやりきり感を漂わせながら着替えていたレギュラー全員が、半裸のまま動きを止めることになっても彼は一人話す。
「あ、みんな聞こえちゃった?」
ごめんね、と笑う顔は文句なしに美しく―――恐ろしい。
急激な冷え込みを感じ、ようやく裸の上半身にシャツを纏い、顔を上げ、すぐに後悔した。
それは全く同じ行動をした仲間たちも変わることなく。
「でさ、明日の昼休みまでに一人候補をあげてくれる?」
疑問の形を取りながら、決して有無を言わせぬ笑みに、ひきつった返事が七つ揃えられた。
もちろん、答えはイエスorハイだ。
「うん、ありがとう」
とても満足そうな部長をよそに、回転率の良さは違えど必死さは同じ七つの脳が大急ぎで、頭の人物登録帳を捲っていく。
少しでも“マネージャーになってもいい人”を探して。
下手なヤツを薦めれば、その被害は倍になって自分に返るに違いないのだ。

「参ったのぅ…」
思わず口をついた感想に、六つの頭が揺れる。
きっと立海テニス部のチームワークはこうして作られていくのだろう。

柄にもなく溜め息を吐けば、それはたちまち七つに重なり、決して狭くない部室に重々しく響いた。
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