第4章 めぐりあい
小さく規則的な揺れとか髪の辺りに感じる穏やかな息づかい。そして身体の左側から背中、膝の裏に感じる逞しい温もり。
少しくすぐったくて不思議な浮遊感をも感じながら優希はゆっくりと目を覚ました。その目覚めを待っていたかのように背中に鋭い痛みが走り、彼女は僅かに顔をしかめた。瞬間、低く艶のある声が頭上から聞こえた。
「起こしてしまったかな、お嬢さん。」
ぼんやりした頭で声がした方へと優希が見上げればそこには見知らぬ男の顔と、彼女を見つめる優しげな瞳があった。男の背後から小さく見える月が彼の端正な顔の輪郭を白く曖昧にし、さながら彼を降臨してきた神か仏かのように思わせる。
少しの間、そんな彼に見とれてしまった優希はふと自分の背や腕に回された逞しい男の腕の存在に気づいた。訳がわからずぱちぱち、と瞬きした優希はきょろきょろと辺りを見回した。遠くに見える地面と間近に見える男の端正な顔立ち、着物越しに感じる鍛えられた腕とはっきりと見える彼の顔に刻まれた深い傷痕。
(自分は…もしかして…。)