第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
クレイオを海軍本部に連れて行かずに、次の島で降ろすのは・・・
もしかしたら、30年前に救うことができなかった奴隷達への償いかもしれない。
「悪いが、あたしはドフラミンゴに容赦はしない。この目が黒いうちはね」
「ドフラミンゴもそれを願っていると思います。おつるさんには頭が上がらないようですから」
すると、つるは声を上げて笑った。
冷静沈着な“大参謀”とは思えない優しい笑顔に、クレイオの顔にも笑みが浮かぶ。
「さァ・・・次の島が見えてきた。これからどうするつもりだい?」
幸運なことに、それなりに大きそうな島だ。
貿易も盛んだろう。
「まずは商船に乗せてもらうつもりです。雑用でも、娼婦でもなんでもしますとお願いして」
どんな汚れ仕事にも耐えるつもりだし、あれほど忌み嫌ったこの容姿も必要とあれば利用する。
「そこまでして、どこへ向かう?」
するとクレイオは胸元のネックレスにそっと触れた。
「まずは、シャボンディ諸島へ」
天竜人の所有物である証を消すために。
新世界を渡るのは困難を極めるだろうし、私には何の力もないけれど・・・
きっと辿り着けるような気がする。
だって、ネックレスがこう語りかけてくるようだから。
二本の足を持つ君よ、どうか忘れないで。
君がもし海の魔物に襲われたら、私は津波よりも早く駆け付けて君を助けよう。
君がもし海の上で道標を失ったら、私は千の泡になって君の行く道を指し示そう。
「ドフラミンゴ・・・どうか忘れないで」
私がこの海のどこへ行こうとも・・・
「私の愛は貴方とともにあることを」
真っ直ぐと前を見据えるクレイオの瞳に迷いは無い。
一羽の鳥は今、自由な空へと飛び立つため、その羽を大きく左右に広げようとしていた。
ドフラミンゴの愛の証である真珠の首飾りとともに───
第7章 「真珠の首飾りの女」 Fin.