第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「若様、冷えたシャンパンをどうぞ」
キャッキャッとプールで水浴びをする若い女達の黄色い声をBGMに、国王ドンキホーテ・ドフラミンゴはビキニ姿のメイドからシャンパングラスを受け取った。
「若様は泳がれないのですか?」
「お前らで勝手に楽しんでろ」
ドレスローザの夏は暑い。
王宮の中庭に造られたプールでは、国中から集められた若い美女達が艶やかな肌と弾けるような肉体を惜しげもなく曝け出し、プールサイドのソファーに座る国王を楽しませようとしていた。
だが、その楽園のような光景も、ドフラミンゴにとっては単なる背景音楽にすぎないのか。
ただシャンパングラスを傾けるだけで、水に入って女達と戯れようとはしない。
その姿が“退屈している”と映っているのだろうか。
ソファーの後ろに控えている幹部の一人、グラディウスが先ほどから心配そうにドフラミンゴをチラチラと見ていた。
「グラディウス」
「はい」
ドフラミンゴが退屈しているのであれば、この国一番の踊り子を呼んでこようか。
それとも、急きょコロシアムを開催するか。
脳みそをフル回転させながら、ボスに“楽しい”と思ってもらえそうなことを考える。
しかし、国王の要求は至極簡単なものだった。
「クレイオはどこにいる?」
いるものとばかり思っていた人間が、水と戯れている女達の中にない。
常にそばでお仕えしろとあれだけ言ったはずなのに、また勝手な行動を取っているようだ。
「あの野郎・・・今すぐに探してきます」
こめかみに血管を浮き上がらせながら、足早に城の中へ戻っていくグラディウス。
その忠誠心が高い部下の後ろ姿を、ドフラミンゴは口元に笑みを浮かべながら見つめていた。