第6章 真珠を量る女(ロー)
「ところで、船長の用ってここですか・・・?」
ローの後ろを歩いていたシャチが、正面の建物を見て怪訝そうな表情を浮かべる。
ここは海軍の目が行き届かない無法地帯エリア、13番GR。
そこの大きな木の根っこに一軒のバーがあった。
こじんまりとした造りながら、看板には『シャッキー's ぼったくりBAR』と書いてある。
「あの・・・ぼったくる気マンマンのバーにしか見えないんですが・・・」
「ああ、そうだな」
「船長、バーには他にもありますよ・・・何もここじゃなくても」
ローは帽子の下から冷めた目で看板をチラリと見ると、狼狽えているシャチにはお構いなしにドアを開けた。
「いらっしゃい」
さすが、“ぼったくり”を掲げているだけあって、店内に客の姿はない。
カウンターの向こうでショートカットヘアの女性が一人、暇そうに新聞紙を広げているだけだった。
「あら・・・トラファルガー・ロー?」
「おれのことを知っているのか?」
「まぁね」
ならば彼が海賊だということも知っているだろう。
女店主は慌てる様子もなく煙草を咥えると、ライターで火をつけた。
「で、何にする? お酒は1杯30万ベリー。ジュースなら50万ベリーよ」
「酒の方が安いんかい!! って、それよりも法外な値段っすよ!!」
ツッコまずにはいられなかったシャチが叫んだが、この店ではそれが当たり前のようだ。
女は特に言い返す様子もなく、ミステリアスな笑みを浮かべながらローを見つめている。
「お前に聞きたいことがあってきた」
「あら、レイさんにコーティングを頼みにきたんじゃないの?」
「レイさん? 船のコーティングなら別の奴に頼んでいる」
「そう・・・ふふ、若くてハンサムな男の子が訪ねてきてくれるなんて嬉しいわ」
食えない女だ、とローは眉をしかめた。
特に殺気を放っているわけではないのに、店主からはピリピリとした圧力を感じる。