第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「この島を守っているのは、海軍や国王だけじぇねェ・・・そんなことも分からねェで、これからも彼女のことを傷つける野郎がいたら・・・」
───懸賞金7700万の“黒足のサンジ”が許さねェ。
サンジの言葉に、ルフィも麦わら帽子を被り直すと、ニッと白い歯を見せた。
「仲間の敵はおれの敵だ。そんで・・・」
船の上からクレイオを見下ろす。
小柄ながらもその圧倒的な存在感に、誰もが硬直し、指一本すら動かすことができなかった。
「おれは友達を傷つける奴を許さねェ」
これが、“未来の海賊王”なのか。
クレイオもルフィから目を離すことができなかった。
そんな彼女に、船長は明るく微笑む。
「サンジの友達はおれの友達だ! な、ショーフ!」
たった一日にして、“麦わら海賊団”の恐ろしさを知ることになった“常春の島”。
ルフィのこの一言により、この島の闇とされてきたクレイオの存在を、誰もが認めざるを得なくなった。
そうしなければ、今度は本当に攻め落とされてしまうかもしれない。
そう。
一味全員が賞金首であり、“司法の島”エニエス・ロビーを壊滅させるなど、世界の注目を浴びる海賊団。
彼らによって、この島たった一人の娼婦は守られることとなった。
「よーし、野郎ども!! 出航だァ!!」
明るい声と共に、大海原へ走り出す海賊船。
この先、彼らがどのような道を歩むことになっても、そのニュースは世界中に届けられるだろう。
この小さな春島にも。
「サンジ、本当にありがとう・・・どうか貴方と仲間達の夢が叶いますように」
クレイオはいつまでも、いつまでも、サウザンド・サニー号を見送っていた。
そんな彼女を取り巻くのは、甘い香りを放つ春島の花々。
そして、彼女の未来を象徴するような、明るい太陽の光だった。
第3章 「ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~」 Fin.