第1章 プロローグ
イオンの光。
雑居ビル。
様々な店舗が軒を連ねる中。
一際華やかな場所。
1つの建物。
その地下へと続く階段を降りると、大きな木製の扉。
室内の音が微かに聞こえてくる。
中に入ると男女の笑い声。
楽しくはしゃぐ声。
愛を紡ぐ、ささやかな声。
BGMは、そんな語らいを邪魔する事なく低音で奏でられている。
「いらっしゃいませ」
席へ案内されると中は白を基調した壁やテーブル、ソファー。
自分だけの時を過ごすため、白いパーテーションの間仕切りは目隠し程度の高さでソファーに座れば周りが全く見えない。
広い空間を狭く感じる事が無いように計算されていた。
パーテーションの前には、これまた白いテーブル。
そこには1冊の本が置かれていた。
「ご指名は如何いたしましょうか?」
その本に目もくれず、言うだろう。
彼の名を。
女が金を落とす場所。
男が女を落とす場所。
甘い甘い花(オトコ)の囁きに蝶(オンナ)は集まる。