第3章 PHALAENOPSIS
『ーーで、16時からはーーーーー』
太陽の光が燦々と室内を照らす。
全面ガラス張りの室内は、広々としたこの部屋をより一層広く感じさせ、窓から見える景色は遮る建物は皆無で先の方まで見通せる程だった。
御社ビル最上階に備えられた社長室、否 ティールーム。
優雅に午後のティータイムのひと時を過ごすのは、このビルのオーナー兼取締役社長。
その傍らで私は、残りのスケジュール確認をしていた。
「あー、それ全部キャンセル」
ピキッ・・・
持っていたペンが握力で真っ二つになった音か私の額に浮かんだ青筋の音か、鈍い音が響く。
「良い天気だからな、クルーズの手配をしてくれ」
毎回のごとく、スケジュール通りに進まないのは当たり前。
当たり前だから、私は極力声色を抑えて進言する。
『ですが、20時からの商談には出席して頂きたいと
「いや、無理」
最後まで聞かず、即答する社長。
『今回は社長同士の顔合わせも兼ねておりますので』
「顔なら知ってるし、向こうさんも知ってるだろう〜
で、お前さんが出りゃ問題無い、なぁ〜 副社長さん」
『・・・ですが、これ
「つうか!お前何で秘書みてぇ仕事してんだよ」
ピキッ、ピキッ・・・
『社長!あんたがセクハラ紛いな事して秘書が辞めたせいでしょ!
私も好き好んでこんな事してるわけじゃないの!!』
我慢の限界。
溜め込んでいたモノを吐き出した。
「そうだったか?じゃ、次を雇え。
すぐ見つかるだろう」
俺様身勝手な社長に付いてこれず辞めた秘書は数えきれない。
そして、そんな社長とは知らずルックスと金に目が眩み秘書希望者は後を絶たない。
この男のどこがいいんだか!
毎回毎回振り回される私は思うのだ。
会社経営者としては、申し分がない程の実力者。
だが、男性としては問題ありの人物だ。
『今日この後面接が入っていますので、今日中には新たに決まるでしょう。
ですので、社長は商談出席よろしくお願いしますね!』
最後の しますね に強めのアクセントをおき、ごり押しする私。
そんな私の言葉も 何処吹く風の如く 片手を上げて返事を返していた。