【うたプリ】歌い手Minori、トリップします……?
第5章 進化の予兆
さ、思う存分弾くぞと思った僕は本当にあれこれ触った。
ピアノ以外の楽器を触ったこともなかった僕としては、かなり新鮮だった。
作曲の勉強をしている期間、暇を見つけてはほかの楽器の弾き方を勉強をしたりもしたけど、なんとか弾けた。
これには流石に僕も驚いたけど、ミューズがいる僕にはこれが普通かと思ったら、あっさりすとんと胸に落ちるよう納得した。
これも僕の才能なんだ、と。
ギター、ピアノ、ヴィオラ、ボーカル、サックス、バイオリン、フルート、クラリネット、トランペット、ボンゴ。
そして、マラカス、ベース、シンセサイザー、チェロ。
今まで出会った、そしてこれから出会うであろう人達の得意楽器を弾いてみた。
皆が弾きたいのもわかる。
どの楽器も弾くと分かる魅力があって、どれも楽しい。
それから、10分、20分、30分、1時間とどんどん時間は過ぎていった。
気が付けば、時計の長い針と短い針は共に0を指していた。
貴「わっ、もうこんな時間………」
店「随分やってたな。で、感想はといきたいとこだが、わりぃ。この後ここに取材が来るんだ」
貴「えっ、嘘………」
バシッ
貴「痛っ」
店長の言葉に僕は驚いた。
そんな僕の態度にイラついたのか、頭を叩いてきた。
それも結構思いっきり。
貴「たたた………。少しは手加減して」
店「うっせ。さっさと帰れ」
貴「何時からなのさ」
店「半からだ。さっさと帰れ」
と言われて簡単に引き下がる僕ではない。
取材が来るなんて、一体何があってそうなったのか知りたいし、誰が来るのか興味があるし。
貴「誰来るの?」
店「シャイニング事務所の奴。わかったらさっさと帰れ」
貴「帰らせてもらう」
シャイニング事務所の人と聞いた瞬間、速攻で即答した僕。
こんなところで会って揉め事とかになったら、面倒だし。
事務所で知り合いといったら、カルナイに林ちゃん龍也さんシャイニーなんだけど、嫌な予感がする。
そう、あのウザい野郎に会いそうな………。
「ヒメちゃーーん!!!」
ガバッ!!
と、僕の予想を裏切ってくれない現実。
こういう時こそ裏切れよ、現実。
貴「うっさい。離れろ“嶺二”」
寿「えーー。嶺ちゃん悲しい………」
貴「どうでもいい」