第1章 「おめでとう」と「これからも…」の間
「お誕生日、おめでとうございます!」
朝一番、元気な声が部屋に響く。
「?……おはよう…ございます……」
眠気眼のままダイニングまで腕を引かれて行くと、何故かその場に不相応な物が置いてあった。
「……これは?」
まだ完全に覚醒していないのか、眼鏡のフレームをクイクイしながらそれを見る。
「はい!私からのプレゼントです♡」
テーブルの上にはどう見ても子供が公園の砂場で使うであろう、可愛らしいバケツが置いてある。
「バケツ……ですか?」
確かにプレゼント用なのか、透明フィルムにピンクのリボンでラッピングはしてある。
「あれ?お気に召しませんでしたか?おっかしいなー……黒澤さんは「男のロマン」って言ってたのになぁ……」
「………黒澤?」
「はい、実は……」
先日、猫丸は石神に渡す誕生日プレゼントについて黒澤に相談した所、「バケツプリンは男のロマン」と語っていたと。
(黒澤のやつ………)
石神はテーブルの上のバケツをあらゆる角度から見聞し始める。そして猫丸の手書きだと思われるメッセージを見て微かに表情を緩ませた。
「確かに、これはロマンを感じますね」
石神は猫丸の方に向き直りギュッと抱きしめた。
「貴女からプレゼントを貰えるなんて……誕生日がこんなに嬉しいと思った事はないですよ」
「喜んでもらえましたか?」
「ええ、とても……」
心からの「ありがとう」他に飾る言葉など必要ない。
そして「これからもよろしく」と。
ちょっとだけおまけがあります→→→→→