第16章 今度は君の手を引いて。(白布賢二郎)
白濁が、のお腹に飛び散った。
「はぁ…っ」
「んん………っ」
身体中の力が抜けて、心地良い倦怠感に包まれる。
「……………」
来年は全国の舞台へ連れていくから、そう口にしようとして白布はやめた。
試合に『絶対』はない。
それは身をもって学んだことだ。
身体を起こして白布は眉間に皺を寄せる。
確証のない約束はしたくなかった。
そんな白布の気持ちを知ってか知らずか、は穏やかな顔で白布の頬に手を添えた。
「……、」
「私、賢ちゃんのバレーしてるところ好きだよ」
「…………」
「だから、ずっと貴方の背中を追い掛けさせてね」
「……!」
ずっとその背中を見てきたから。
今日、あんなに自信をなくした背中を見たのは初めてだった。
「…立ち止まったりしたら、背中叩いちゃうからね」
そう言ってはニッコリと笑った。
「……違うだろ」
「?」
「お前はもう俺の背中を追わなくていい」
「賢ちゃん…」
だってこれからは。
白布は視線を向けずにの手を握った。
「俺の隣にいるんだから、背中なんて追わなくていい」
「うん…、そうだね!」
約束はしない、でも必ず連れていくから。
その時はまたそうやって笑って欲しい。
「…さて、バレないように戻んねーとな」
「バレたらバレーどころじゃなくなっちゃうもんね」
「オイ、リアルな事言うな」
「ごめん(笑)」
目が合って、吹き出すようにして二人で笑い合った。
「来年は、もベンチだな…」
来年はスタンドからじゃなく、コートのすぐ側で自分を見つめるの姿を白布は思い浮かべた。
応援に夢中になりすぎてコーチに宥められてたり、得点の度に一喜一憂する姿が想像できて思わず白布は笑みを溢す。
「うん!一番近く、だよ」
特別な君の、一番近くでーーーーー。
END