第3章 雨雲はどこの空へ。(赤葦京治)
鍵を職員室へ戻し、二人並んで帰路につく。
「ねぇ、次に雷が鳴った時は今日の事を思い出せばいいよ」
「…?どうして?」
赤葦の言う意図がわからずは隣に並ぶ彼を見上げて首を傾げた。
「きっと恐怖よりも気持ち良かったって言う記憶の方が強いと思うから」
「…////!!??」
「恐怖と快感って似たようなところで感じ取るらしいから」
そう言うと赤葦は自分のこめかみを指でトントンと叩いた。
「……そ、そんな事になったら…雷の度に私、悶々としちゃうの…?」
「……………」
のその返答は赤葦の想像の斜め上。
「赤葦くん……?」
「……それで煽ってないって言うならまた怒るからね?」
「え?え??何?あっ…赤葦くん?!」
赤葦はの腕を引き、自身の腕の中に閉じ込める。
梟谷バレー部の中で決して大柄とは言えない赤葦だが、の体などすっぽりと包めてしまう。
「お、怒るの…?」
チラリと赤葦を見上げが呟いた。
「…そんな可愛い顔されたら怒れないでしょ、はぁ…心配だ……」
自分の魅力をもっと自覚して欲しい。
そんな赤葦の願いも虚しくはキョトンとしたままだ。
愛しい彼女を抱き締めたまま、赤葦は空を仰いだ。
雨雲は今頃どこの空へ。
目の前には星空が広がっていた。
END