第5章 新たな出会い
「で、赤葦に何の用だったの?」
「それは…かくかくしかじかで……」
「へぇー!赤葦って図書館行ってたんだ!」
「まぁ、練習の前に時間があったら。」
…木兎先輩はそこまで怖い人じゃなさそうだ。
少し警戒心の解けた私は2人の会話を聞きながら、図書館でのことを思い出していた。
電話口から漏れ出すほどの大声と、目の前の木兎先輩の音圧。
あのとき赤葦さんを呼び出したのはどうやら彼らしい。
…ん?ということは、木兎先輩がバレー部の主将?キャプテン?
……なんか、私の中の主将って、もっと、こう……切れ者だったり、どっしりしたイメージが………
「にしても、わざわざ届けに来てくれるっていいやつだな!赤石!!」
「は、はい!!」
「サンキュー!!赤葦が!!」
あ、あと俺は木兎光太郎ね!よろしく!
まるで太陽みたいな眩しい笑顔で差し出された手。
その曇りのない笑顔を見てると、なんだかこっちまで明るくなれる気がする。
さっきまで、あんなに怖そうって思ってたのに。もう今じゃすっかりそんな感情は溶けてなくなっている。
……そっか。
きっとこの人はこうやって人の心に馴染んでいくんだ。
彼に対する負の感情なんか、彼自身の明るさで消し去って。
周りの人を惹きつけて、好かれて、ついて行きたいって思わせる人なんだ。
……一瞬、こんな人が主将で大丈夫かなって思っちゃってごめんなさい。
きっとチームのみんなに好かれる、いいキャプテンなんですね。
心の中で密かに謝りながら、出された手を握った。