第58章 風邪。*茶倉
「優ちゃん、大丈夫か?」
「あ…え、和くん……。」
突然のことに心の準備が出来ず、戸惑う。
「いや、そんなに怖がるなよ…ってオレが言うのもおかしいか。」
ハハッと乾いた笑いを見せる。
「別に、怖がってる訳じゃ…」
だが私の言葉は遮られる。
「この前はごめんな。…全部オレが悪かったんだ……!」
その言葉には強い後悔の念が感じられて、
「大丈夫だよ。」
って思わず微笑んだ。
和くんも微笑み返してくれて…
「やっぱ優しいな…」
くしゃりと頭をなでられる。
「そんなことないよ。」
恥ずかしくなって、俯く。
熱いのは風邪のせいなのかな?
そんな私を見て和くんがまた真剣な顔に戻る。
雰囲気が変わったのを感じて、体が強張った。
「優ちゃん、オレさ…『ぐぅーー』…ブハッ!このタイミングでかよ!」
朝から何も食べていない私のお腹が空腹なのを訴える。
…このタイミングで。
それを聞いた和くんがゲラゲラと笑い出す。
「そんなに笑わないでよ!」
でも久し振りに見たその笑顔は、
きらきらと輝いていて、
胸がキュッと苦しくなった。