第2章 夜景の前で
風があたしの髪やスカートを揺らす。
「寒い?」
無意識に腕をさすっていたらしいあたしは、首を横に振って答える。
「大丈夫ですよ。これぐらい。」
「嘘つけ。」
岩本さんは上着を脱いであたしの肩にかけてくださった。
「ほら。」
あまりの紳士的な所作に、驚きや感動を超えて目眩さえしてくる。
「これじゃあ岩本さんが寒いですよ。」
「案外着込んでるから大丈夫。」
ぺろっと、ニットの袖から長袖のインナーを見せられて笑った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「そうだよ。もっと甘えろ。」
笑って、2人で夜景を楽しんだ。