第3章 〜潤〜
神崎さんに呼ばれたその部屋は
局内の少し奥まった所にあって
前を通る人は滅多にいない
テーブルを挟んで向かい合って座ると
「貰ってきた」
と言って誓約書をテーブルに置く
少し右肩上がりの整った綺麗な字
見覚えのある愛利の字で書かれた
あいつの名前
どんな気持ちでこれを書いたのかと思うと苦しくなった
「・・・神崎さん。」
「ん?」
「あいつ・・・どうしてました?」
俺の問い掛けに取り出したタバコに火をつけながら答えた
「まぁ・・泣いたりもしなかったし、
部屋もキレイだった。
特に生活が荒れてる感じはなかったな。
ただ・・・」
「ただ?」
「メシは食えてないんじゃないかな・・・」
「・・・・・・。」
タバコの煙を吐き出す間を置いて
神崎さんが続けた
「たった1週間で痩せたって分かる位だから
メシは食ってないんだろうな・・・。」
少し痩せたからってもともと細いあいつは
あんまり分からないはずなのに
それが神崎さんでさえ気付くくらいなんだから
きっと相当だ
俺は眩暈にも似た感覚を覚えて
そっと目を閉じた