第9章 恋に変わるまで…*
「黄瀬君…ごめんね。こんな時にマネージャーの私が迷惑かけて。」
「何言ってるんスか?!てか、俺のせいでしょ…?」
そう言う黄瀬君は、悲しそうに顔を曇らせた。
「もう!皆してそんな顔するの?止めてよ〜!黄瀬君のせいでもないし、誰のせいでもないんだから。」
「桜っち…なんでいつもそんなに強いの?無理してないんスか?だってこれ…痛かったしょ?」
黄瀬君の手が私の叩かれた頬に触れてきた…その手は本当に優しくて心地良くて泣きそうな気分になる。それでも私の目から涙は出ない。
「本当に大丈夫だよ?瀬戸さんが叩かれなくて良かった…ちゃんと守ってあげられたかな?」
「うん…桜っちは、ちゃんと瀬戸さんを守ってたっスよ。」
「そっか…なら良かった。私、皆が大事だから!皆に笑っててほしいからあんなに悲しそうにしてほしくない。だからちゃんと皆を守れるようにもっと強くなるね!」
そうだ…さっきの瀬戸さんの涙を見て思い出した…忘れてたわけじゃない。再認識したって言うのかな?…私はもっと強くなって皆守れるようにならないとダメなんだ。
「じゃあ…桜っちの事は、誰が守ってあげるんスか?」
「えっ?…」
私の事…?そんな事聞かれた事もなかったし、考えた事もなかった。私には、まりなもいるし、家族だっている大事な人がいて、守りたい人達がいるから強くなれる。自分の事だって自分で守れる。
「私は…自分の事だって自分で守れるよ?家族も、まりなも、バスケ部の皆、黄瀬君も…瀬戸さんも、私が守りたい人」
「そんなの…だめっスよ。」
「どうして…?」
「だって桜っちが俺たちの事、大事だと思ってくれてるように…俺たちだって桜っちの事が大事なんスよ。だからこれからは俺に、俺たちにも…桜っちを守らせて?」
トクン…
さっきとは違う苦しさがある…落ち着け私。思考とは裏腹に私の胸の鼓動は増すばかりだ。