第15章 その瞳の正体*
「俺らも帰ろうか…」
「そうだね…」
「桜っち…明日の部活終わったら、俺に時間くれないスか?」
「うん…あの…」
「今は、ダメっス。情けないけど心の準備が整ってないから…明日返事聞かせてくれる?」
「うん…わかった。」
伝えたい…体と心がそう言ってるのがわかる。こんなに気持ちは溢れてるのに…上手く言葉にできない。伝えるのってこんなに難しい事だったかな?
黄瀬君に初めてこの力を見せた後…もうダメだと思った。醜い姿を見せてしまったと…それなのに私は私だからって言ってくれた。嬉しくて、嬉しくて…もっと好きになっちゃうよ…?
「ねぇ、桜っち…」
「ん?…どうしたの?」
「俺、もっと桜っちを知りたいっス…だからこれからは俺にも桜っちの話聞かせ?」
「うん…ありがとう。私にも黄瀬君の話聞かせて?」
「もちろんっスよ!じゃあ、また明日ね!おやすみっス!」
「送ってくれてありがとう!また明日ね!」
ほんの少し…名残惜しいと思ってしまった。大好きな背中を見ながら、まだ行かないでほしい…そんな欲深い事を思ってしまった。自分の気持ちも伝えてないのに…なんて私は、ワガママなんだろう。
「好き…」
きっとこの声は、黄瀬君には、届いてない…でも明日は、きっと届けるから…
たった二文字…
その二文字がこんなにも難しい。
それでも伝えたい…
あなたが私に、伝えてくれたように…