第44章 続・一松事変 〜作者リク作品〜
カラ松視点
(うぅ…頭が、割れるように痛い…)
こめかみを押さえながら瞼を開いた。
白い天井が見える。
記憶が曖昧なんだが、どうやら意識を失ってしまっていたらしい。
(確か、ヅタヤの前でパーカーを交換した一松と会って…)
主にバレたくなさそうだったから、高校時代演劇部のエースだった実力を遺憾なく発揮して。
それから——。
(ちょっと待て!ここはどこだ!?)
見慣れない部屋にいたので、急いで起き上がり部屋を見回す。
すると、ソファーに仲良く並び、一松と主が映画鑑賞をしているのが目に入った。
(そうか、ここは一松ガールの家。気絶したオレを心配して運んできてくれたのかっ!)
なんて優しいカップルなんだ!ナイスカポー!!
未だに一松のパーカーを着ているという事は、まだ演技を続けてやった方が良さそうだ。
オレは、頭痛と格闘しながら努めて元気を装い話しかけた。
「起きただにゃー。心配かけて悪かったにゃー」
「じゃまだから速やかに帰れクソ松」
「えぇーっ!?」
なにその仕打ち!?
っつーか全く状況掴めてないんだけど?
よく分からんが、カラ松タイム終わってんならパーカー返してくれる!?
ブラザーはつれなかったが、主はとても優しく接してくれた。
何故かは分からないが沢山謝られ、お茶を出してくれたり傷の手当をしてくれた。
「すまないな、一松ガール」
「ううん、こっちこそ話せばややこしくなるけれど、いろいろとごめんなさい…」
手当をしてくれている優しいガールの手に、そっと触れて微笑む。
「フッ、謝らないでくれ。キミは笑顔がよく似合「帰れっつってんだろボケェ!!」
「いたーーいっ!!」
一松に蹴られて家から追い出された。
(わけが分からない…オーマイゴット!!)
外に出されると、アパートを冷たい秋風が吹き抜けて行った。
不可解な衣装チェンジと突然の気絶。その真相は、風に吹かれて消えてしまったのだった。
(風に吹かれて——か…ああ〜降りてくる、降りてくるぅっ!)
散々な目に遭ったカラ松だが、新曲の歌詞は降ってきたらしい。
それが唯一の救いだった。