第65章 掴む
ガコン。
会場に響くのはボールがリングを揺らす音。
「タイムアウト!誠凛高校‼ウィンターカップ優勝」
その言葉は耳を通り過ぎる。
どこか、夢を見ている様な、
少し、他人事の様な、
そんな感覚でコートを見つめていた。
「碧、勝ったわよ。優勝よ」
抱きつくリコにやっと実感が沸く。
涙が溢れた。
「…リコ。勝っ…た…」
「うん。勝ったわよ」
二人で、ぎゅーっと抱き締めあって、
「行くわよ‼」と引かれて、
コート内の皆の所へ駆け寄った。
涙を流しながら、
歓び合うチームメイトが見える。
火神に飛び付く、コガや日向が見える。
リコを抱き上げる木吉が見える。
ぎゅっと腕を捕まれて、
私の身体を引き寄せたのはニコリと微笑む凛。
表彰式。
晴れやかな皆の顔を、
それぞれの胸にかかるメダルを、
日向が持つトロフィーを、
私は忘れない。
バスケ部に入ってよかった。
皆と一緒に過ごせてよかった。