第5章 Burning quintet
「土方さん……」
思い切って名前を呼んでみると、驚いたように顔を上げた彼と私の視線が絡み合った。
「こんな話、何の慰めにもならないと思いますけど……
私が生きていた時代では、貴方達を悪く言う人は殆ど居ません。
新撰組は英雄として扱われる事が多くて、
維新志士も会津藩も、新撰組も……
皆が己の信念を貫いて生き抜いたんだと
尊敬と憧れの念を持って語られ続けています。」
絶え間無く話す私を、土方歳三はじっと見つめたままだ。
そして何故か私の目にはじわりと涙が滲む。
「だから……恨まないで下さい。
勿体無いです。
貴方は日本最後の武士だと言われる程、
皆が憧れる存在なのに……勿体無いですよ。
そんな憎しみなんかに囚われずに、
もっと自分を誇って………っ!」
突然、土方歳三の右手が私の頬を撫でる。
「貴様は……自分を拐った男の為に涙を流すのか?」
驚いて微動だに出来ない私に向かって彼は一層身体を寄せた。
ギシギシと長椅子が音を発て、逃れられない位置へ追い詰められてしまう。