第3章 Triple fighter
「だから、。
お主が俺達の帰蝶になれ。」
頬に添えられていた信長様の手がゆっくりと私の髪に移動し、その毛先を弄ぶ。
「そんな……
そんなの無理ですっ。」
濃姫様みたいになんて……なれる訳が無い。
畏れ多くて身体が震えてしまう。
「何をするという事では無いぞ。
お前の持っている知識で俺達を導け。
そして後は何事にも動じず、只笑っておれば良いのだ。」
それって………
「それ……豊久にも言われました。
私が笑っていれば、それが勝ち戦だって……」
私の言葉に信長様は驚いたようだ。
大きく目を見開いてから、突然大声で笑い出した。
「成程。
我が総大将もまるっきりの馬鹿でも無いようじゃの。」
「眠るまで側に居てやるから」と言ってくれた信長様に甘えて、私はゆっくりと身体を横たえた。
まるで父親に見守られているような安心感に包まれて眠りに落ちる瞬間、信長様がポツリと呟くのを聞いた気がする。
「こんなジジイがなあ。
俺も……お豊(トヨ)を責められんよ。」