第14章 DESTINYー運命ー
「んっ……」
突然、顔に降り注いだ日射しの眩しさに目を覚ます。
随分と久し振りに感じる柔らかい寝心地。
この部屋中に漂う独特の匂いも私は昔から知ってる。
ふと日光が射し込む方向へ目を向けてみれば、そこに立って居たのはカーテンを開けながら振り向く看護師さんだった。
「あら、気が付いたのね。」
優しい笑顔を湛えた看護師さんが近付いて来て、私の腕に刺さった点滴の針を確認してから然り気無く聞いて来る。
「電車事故の事、覚えてる?」
私は何故か首を横に振った。
「そう。
でも無理に思い出そうとしなくてもいいのよ。
………本当に助かって良かったわ。」
恐らく大勢の乗客が亡くなった大事故だったんだろう。
多くを語らない看護師さんの表情と声色がそれを物語っていた。
「それにしても、あなたの傷は本当に不思議だったのよ。
先生も首を捻ってわ。
たった1箇所だけ…しかもまるで……
ううん、こんな話は止めましょう。」
看護師さんは少し気不味そうに私の毛布を整えてくれて……
「でももう心配しなくても大丈夫よ。
手術もちゃんと成功したし。
暫くは入院して安静にして貰わなくちゃいけないけど
この子の為にも頑張らなくちゃね。」
そして私のお腹を優しく擦った。
「…………え?」
「あら…もしかしてまだ気付いて無かったの?
お腹を庇うような体勢で救出されたって聞いたから
もう分かってるんだと思ってたわ。
大丈夫、この子も無事だから安心して。
さ…じゃあ先生を呼んで来るわね。」
そう言って、看護師さんは病室を出て行った。