第12章 REUNIONー再会ー
「………美味いか?」
特に感情の籠っていない声でそう問い掛けられた私は、その声の主をちらっと一瞥するものの無言のまま与えられた食事をもくもくと食べ続ける。
食欲なんか無いけれど、いざ逃げ出せるチャンスが来た時に力が出ないなんて事になったら無意味だ。
今はそのチャンスを窺いながら力を溜めておかなくちゃ。
そんな態度を咎める事も無く、土方歳三は相変わらず感情の読めない視線をじっと私に向けていた。
土方歳三に裸にされた事を微かに覚えている。
動かせない身体と朦朧とする意識の中、『ああ…このまま乱暴されるんだ……』と正直覚悟した。
だけど彼は私を暫く裸のまま放置した後、何もせずまた丁寧に下着とワンピースを着せてくれたんだ。
あの時は薬の所為で思考が停止してたからその意味は全く理解出来なかったけど………
ううん、今でも理解は出来ていない。
只それからの土方歳三は私をこの部屋へ閉じ込めただけで、何も言わないし何も行動を起こさなかった。
勿論監禁されているのだから優遇だとは言えないけど、それでも彼は私を他の廃棄物(エンズ)の目に晒さないよう、細心の注意を払っているように感じる。
そう、まるで私を守っているみたいに。
だからって情に絆されたりはしないんだから。
私は絶対に豊久の元へ帰る。
再び拐われちゃったりして皆心配してるだろうな。
自己嫌悪と申し訳無い気持ちで一杯だ。
簡単に源義経の事を信用するなんて、本当に自分の甘さ加減にうんざりするけど……
でも、待ってて………豊久。
必ず貴方の所へ戻るから。
もう豊久に救って貰おうなんて思っていないよ。
私は自分の力で戦ってみせる。
だから………ねえ、豊久……また会えたら………
その時は私を力一杯、抱き締めてね。