第10章 Gray Zone~源義経~
僕の唐突な申し出にも顔色一つ変えない。
そんな与一はやっぱり美しいな。
益々お前が欲しくなって仕舞うよ。
「必ず……さんを連れ戻してくれるのですね?」
「ああ、勿論。
僕が一度口にすれば反故にしない事は
お前も良く知っているだろう?」
良く分かっている筈だ。
だって与一は僕の言い付けを必ず実行させて来たじゃないか。
そう、どんな無情な事だってね。
与一は呆れた様な、諦めた様な、何とも言えない表情で一つ息を吐いてから………笑った。
「為らばこの身体、貴方に捧げる事など吝かではありません。」
その言葉に僕の背筋がぞわぞわと粟立つ。
「へえ……あの娘ってそんなに大切なんだ?
与一が僕に身体を投げ出す程?」
「貴方に差し出すのは身体のみ。
私の心までは捧げない。
矜持さえ揺るがなければ身体など惜しくはありません。」
一寸……苛つくよね、その言い方。
でもまあ良いか……与一を抱けるなら。
その惜しくないと差し出した身体を滅茶苦茶に抱き尽くしてあげるよ。
僕がどれだけ与一を求めていたのか、思い知ると良い。
本当はお前も気付いていたんだろう……あの頃からずっと。
「じゃあ交渉成立。
僕は面倒臭い事は嫌いだ。
全部脱いで、四つん這いになってよ。」