第9章 Blue Velvet~那須与一~
嫌な予感がする。
さんが消えた。
廃棄物(エンズ)に拐われたと見て間違い無いだろう。
恐らくさんは一人で廃城を出て、其処で連れて行かれた。
廃城の中へ廃棄物(エンズ)が乗り込んで来たならばお豊(トヨ)は勿論、僕も信長殿も気付かない筈が無い。
さんが何故一人で外へ出たのかは置いておいて……
まあ、想像は付くけどね。
多分、お豊(トヨ)に愛され過ぎちゃったんだろう。
そんなさんを咎めるなんて出来る訳が無い。
只、僕が気持ち悪いのは……
さんだけが綺麗さっぱり居なくなっている事だ。
あれ程さんに執着していた土方某がさんを取り戻しに来たとして、僕達に何の所業も起こさず去るだろうか?
僕や信長殿だけなら兎も角も、殺しても飽き足りない位に憎んでいるお豊(トヨ)が居るのに……?
それは有り得ない。
じゃあ、土方某以外の廃棄物(エンズ)が来て居たとして……
それだって僕達にさんを拐う所を見せ付ける筈だ。
さんを人質に取れば僕達が手を出せないのは分かりきっているし、それを見せ付ける事で僕達に無力感を与える事も出来る。
なのに………何故………?
僅かでもさんが拐われた痕跡が残っていないだろうかと、僕は一人で廃城の回りを捜索しながら考えていた。
無理矢理拐われた様な名残でもあれば…と思ったけれど全くそういった気配も無い。
それが気持ち悪いんだ。
一度拐われて警戒心も強くなっているさんが気を許して仕舞う……
そんな事が可能なのかな?
それが出来た人物が現れたって事?
総毛立った心をぞわぞわと逆撫でされる様な奇妙な感覚が本当に気持ち悪い。
……………嫌な予感がする。