第3章 神の率いる百鬼夜行
あきれたような声が聞こえ、顔を上げると総大将がいつのまにやらそこにいた。
後ろ手に腕を組み、綺麗な月だと空を仰ぐ。
「そうなんだ…」
「儂からのプレゼントは気に行ったかの?」
え?っと首をかしげ、手に持った写真を見つめる。
「これ…じいちゃんから?」
「そうじゃ。」
「……自分で渡せばいいのに。そう言うとこって、リクオとそっくりなんだね。」
「だれが爺とそっくりだって?…いないと思ったら此処に居やがったのか。じじいも。」
総大将の後ろから不機嫌そうな声が聞こえた。紫苑が視線をずらすと、リクオが腕を組みながらため息をついていた。
「なんじゃ、リクオ。お主も月を見に来たのか。」
「それもあるけど、紫苑を捜しに来たんだよ。どこにもいねぇし。…何見てんだ?」
紫苑の持っている写真に気付くと、横からのぞくようにして写真を見る。
「親父…」
「お主らを見てると、まことに不思議な気持ちになる。リクオは鯉伴とよく似て、中身は儂とそっくりじゃ。人間姿は若菜さんじゃしの。…紫苑は人間姿はお主の父親にそっくり、今のその姿は母親に瓜二つじゃ。中身はあいつに、お前の婆様にそっくりじゃが…そして、ぬらりひょん姿は鯉伴とよく似ておる。」
ただ写真を見つめるリクオと、半ば唇をかみしめるようにして総大将を見つめる紫苑。
総大将は顔を下に戻すと、
「…この爺の為にぬらりひょん姿になってくれぬか。お主ら二人がそろっているのを儂は見たい。」