第14章 その後·····
~誰かside~
「忙しすぎて空見る暇なんて、無かったでしょ」
くすくすと笑う彼女に、私は頷いた。……こんなにゆっくりと夕日を見ることができたのは何時ぶりだろうか…。考えながら、ふと自分たちがもう落下していないことに気づく。
「八木さん、ちゃんとご飯食べてます? 軽いですよ」
大丈夫だよ…そう言おうと犬猫山くんを見た私は、目を見開いた。私の目の前には、あるヒーローを思い浮かばせるような炎があったからだ。ただ、彼と違うのは、目の前の炎はまるで鳥のように翼があるということ…。
「………私の父方の祖父が動物に変身できる個性、母方が炎を出す個性の家系。私はその混合みたいです」
そして…と言葉を続ける彼女が目を閉じた。
「そして、これは父から受け継いだ個性…」
すると、彼女の炎が私へと移る。しかし、じんわりとした温かさが私を包むだけで、その炎は私に怪我などさせなかった。不意に体の痛みが無くなっていることに気づく。
「私の父は医者で、治癒の個性を持っていたんです」
誇らしげに家族を語る彼女に、私は微笑んだ。彼女の中に彼らが生きていた証がある…そのように感じたのだ。
「犬猫山ァ!!!」
「げっ!?」
相澤くんの声に思わず病院を見る。すると、病室から落ちた私たちを見て、かなりの騒ぎになっていたらしい。目を釣りあげてこちらを見る看護師たち、医者、警察……そして、相澤くんが私たちを説教しようと待っていたのだった。