• テキストサイズ

松の間

第12章 心を*トド松


side.トド松

放課後、部活をする生徒もちらほら帰り始める頃
僕はまだ校舎内にいた
最近気になる子に会うために

1月ほど前に兄さん達を探して校舎をウロウロしてた時、ふと教室に残る女の子が目に入った
無心に本を読んでいた彼女に声をかけたのが始まり

淡々としてて、僕が話さないとひたすら本を読むような子

ト「あ、いたいた…一之瀬ちゃーん!」

また本読んでる
名前を呼ぶと、ユルリと顔を上げ

「…トドちゃん」

ニコリとせずに言う

ト「もぅ、それやめてってば」

「どうして?私がいいからいいじゃない」

これずっと言ってるのにやめてくれないんだよねぇ
ま、一之瀬ちゃんだから強くは言わないけど

「…で、どうしたの?」

ト「いつも通り一之瀬ちゃんに会いに来たの」

キュルン、て効果音が付きそうなブリッコをしてみる
けれど当の一之瀬ちゃんは

「そう」

一言だけ。眉一つ動かさない
彼女が心動かすものってなんだろう
って言うか、まったく脈なしだよねぇ

どこがいいなんて分からない、興味から始まっていつの間にか一之瀬ちゃんばかり気になっていた
一之瀬ちゃんの心を僕が占領出来たらいいのに

「どうかしたの…今日は静かだね」

ト「今日はって…僕だって悩む事くらいあるんだから」

言えない、君のことなんだって
女の子って、恋ってこんなに難しいことだっけ

「ねぇ、何にそんなに囚われてるの?」

ト「へ?」

囚われる?
まぁ、だから君にですけど

ト「気になる人…がいるから」

「…そう」

やっぱり一言だけ

「ねぇ、それってどんな感じ?」

それ?どれ?なにか落ちてるの?
話の意図が分からなくてキョロキョロする

「人を好きになるの」

ト「あ、あぁ、そのこと」

どうって言われてもなぁ

ト「んー、その人のことばかり見たり考えたりしちゃうかな。少しでも近くにいたいし」

だからこうして会いに来てるのに
会うだけでは伝わらないのは分かってる
でも人を好きになることがどうかと聞く相手に言ったところで、結局は伝わらないだろう

ト「はぁ」

「トドちゃん、大変ね」

全く当の本人は呑気なものだ

ト「とりあえず帰ろう?暗いよ」

「ホントだ。行こっか、トドちゃん」

こうして一緒に帰れるから、ほんの少し期待してしまうんだ
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp